この記事では、むかし目指していたFIREについての考えを記載します。
執筆者のえもんだ社長のスペックは、
- フリーランスのITエンジニア
- 年収は1,000万円ちょっと
- 資産運用は株のみで2年程
- 現在の運用総額は500万円程(最盛期は1,000万円程)
の人物です。
自分なりにFIREを目指して節約や資産運用をやってましたが、現在はFIREを目指していません。
理由を詳述します。是非ともご覧ください。
執筆者の人物像に興味がある方は、こちらの記事もご覧ください。
目次
FIREとは
-FI(Financial Independence)と
-RE(Retire Early)
まずはFIREについて記載します。
FIREは Financial Independence, Retire Early の略称で、経済的自立をし早期退職する、という意味です。
大雑把に、
- FI:株や不動産などの資産収入のみで生活費をまかない
- RE:30代か40代くらいで会社を辞めて自由に暮らす
という人生設計を指します。
まずは、比較的再現性の高い株の配当金での生活を考えてみます。
現在、株の配当金の利回りは、大きくリスクを取らない限りは年利4%程(税引き後)です。
よって、年間生活費が300万円(月間生活費25万円)の人は金融資産7,500万円くらい必要で、年間生活費が500万円(月間生活費41万7千円)の人は金融資産1億2千500万円くらいが必要です。
また、完全なFIREではなくサイドFIREという生き方もあります。
こちらは生活費の半分ほどを金融資産からの収入で賄う、という考えです。
必要な資産は、FIREの半分ほどで、年間生活費300万円の人は金融資産3,750万円くらいが、年間生活費が500万円の人は金融資産6,250万円くらいが必要になります。
パッと見ただけでも、これだけの資産を築くのはちょっと難しい話です。
次の章で困難さを詳述します。
FIREを目指して直面した困難
FIREについて詳しく調べてみた人や、実際に自分の収入・支出・資産について計算した人ならわかると思いますが、FIREはかなり難しいです。
直面した困難をひとつずつ解説します。
必要な金融資産額がとてつもなく大きい
第一の困難は必要な金融資産額の大きさです。
これは誰でも直感的にすぐにわかることです。
年間生活費300万円のサイドFIREでも、高配当株で賄おうとすると3,750万円の金融資産が必要になります。
よく「複利の力があれば」ということを聞きますが、積立NISA満額の33,333円をS&P500に20年間投資し続けた場合、年利10.0%なら約2,531万になります。
参考サイト:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/smartphone/saving/simulation/
ちなみに、2022年10月末時点から見て、過去20年は10.6%利回りがあり、過去30年では10.3%の利回りがあったそうです。
参考サイト:https://myindex.jp/data_i.php?q=SP1001JPY
※実際に皆さんが投資する場合には、ここから証券会社の報酬など(最安値なら0.1%程度)が引かれます。
積立NISA満額は結構大きな投資額ではありますが、20年間投資し続けても300万円サイドFIREに必要な金額の65%程です。
(かなり好調であった直近30年間の利回りで)22歳で開始して42歳まで続けても、3,750万円には至りません。
ちなみに、そのまま積み立てると24年(46歳)で約3965万6千円になり、3,750万円は超えます。
積立NISA以外に資産形成をする方法もありますが、その部分には税金がかかるので、更に大きな金額を捻出して投資する必要があります。
ましてや1億越えとなるとかなりハードルが高いです。
生活費の増加を考える必要がある
上記で年間生活費300万円のパターンと500万円のパターンでシュミレーションしました。
独身の人であれば、生活費300万円あればそこまで不自由しないでしょう。
ちなみにわたくしは2021年は350万円ほどの出費でした。
ただ、これはあくまで独身の時の話です。
例えば、東京に住む4人家族であれば、年間300万円で生活するのはかなり難しいです。
その他、親の介護などでお金や労力が必要となるケースもあります。年間生活費が500万円以上になる家庭も珍しくはないでしょう。
「FIREを達成するために結婚も出産も親の介護も一切しない!」というのは全員が出来る人生設計でありません。
ほとんどの人は家族構成や生活スタイルが変化していきます。子供の就職までは年齢を重ねるにつれ出費は増えていくのが一般的です。
出費の増加もFIREを困難にします。
金融資産は安定していない
続いての困難は金融資産の不安定さです。
こちらがS&P500の66年のチャートです。
このチャートからどの20年を切り取ってもマイナスになりません。つまりは20年以上の長期投資なら下がったことが無く、かなり有望な投資先です。
しかし、それでも過去何度か暴落をしています。
お金が必要なタイミングと暴落のタイミングが重なった場合には、かなり分の悪い取り崩しをしなければなりません。
暴落のタイミングは、わたくしのような普通の人ではまず分かりません。いつ暴落に直面するかは運次第です。
また、これまでは20年以上の長期投資ではマイナスになったことがありませんが、今後どうなるか断言はできません。
例えば、日本でもバブル崩壊までは「日本の土地は値下がりしたことがない有望な投資先です」という売り文句が使われていました。
有望ですし見通しは明るいと思いますが、長期積立をするなら数千万円の資産に対するリスクを受け入れる必要があります。
また、これまで暴落後に必ず回復してきたとはいえ、長いときでは底打ちまでに5年、回復までに更に10年くらいかかっています。暴落に直面した際に、含み損を抱えながら長期間を耐え忍ぶ胆力も必要になります。
資産運用はしんどい
わたくしは投資を始めて2年程になりますが、資産運用はしんどいと感じています。
例えば貯金が1,000万円あるとして、
- イザという時の貯金としていくら残しておこうか?
- 積立NISA以外にも投資信託を購入しようか?
- 高配当株を買うならどの銘柄がいいだろうか?
- 出来れば安いときに買いたいが、いつ安くなるだろうか?
- 今後、家や車など大きな出費がありそうなタイミングはいつだろうか?
- まとまったお金を使ってやってみたい事業もある。
などなど、色々と悩みが出てきます。
わたくしは過去に、積立NISAなどで投資信託を購入しある一定の額になったら売却して高配当株を買う、という選択肢を考えたこともありました。
しかし、真剣に考えれば考えるほど難しいということが分かりました。
理想を言えば、最高値のタイミングで投資信託を取り崩し、最安値のタイミングで高配当株を買う、ですが・・・。
まず、投資信託を高値で取り崩すタイミングがわかりません。
次に、高配当株を安値で購入するタイミングがわかりません。
そして、高配当株は銘柄選定自体が難しいです。
平日に働きながら上手く買い替えが出来る自信はありません。
資産運用というものは素人には難しい仕事だ、と感じました。
挑戦しがいのある大仕事ではありますが、資産運用について考えれば考えるほど苦しくなりましたw
そこまで深く考えずに機械的に買い増しする、などの方法であればこの苦しみからは解放されると思います。
しかし、上昇時も下落時も愚直に買い増しを続ける、というのも胆力が必要な行動です。
これまでの株式投資では、利確した部分も含み益の部分もプラスではありますが、(特に個別株投資は)ちょっとしんどいというのが正直な感想です。
金融資産よりも持ち家を
これはFIREの困難さではありませんが、資産運用よりも住宅購入をした方が得するケースが多いです。
住宅ローン完済後のことも考えれば、賃貸よりも持ち家の方が圧倒的に得します。(固定資産税や修繕積立金を考慮しても持ち家の方がずっと安いです)
恐らく、生涯を通したら持ち家の方が2,000万円くらい得をするのではないでしょうか?
家賃を払いながら投資資金を捻出し、投資で2,000万円儲けられるのは超優秀な人のみだと思いますが、持ち家で賃貸より2,000万円得するのは平均的な人でも十分可能です。
また、持ち家を持てばたいていの場合は月々の出費も減り、投資資金の捻出にも有利です。
詳細については、こちらの記事をご覧ください。
ここで話しているのは、あくまで自分が住む家の話です。
不動産投資は、住宅取得費用に自分の利益と不動産仲介業者の利益を乗せて誰かに貸し出すという、とてもハードルの高い事業です。本業の片手間にやることはオススメできません。
とくに悪質な業者の怪しい儲け話に騙されないよう、十分お気を付けください。
FIREという生き方について
前章では、FIREはかなり困難という話をしました。
続いては、そもそも「FIREは幸せな生き方なのか?」について考えてみます。
経済的自立(FI)について
経済的自立(Financial IndependenceI)について考えてみます。
資産収入で生活費をまかなえれば、とても裕福に生きていくことが出来ると思います。
しかし、わたくしが若い頃に大ファンだった小説家の森博嗣先生が、経済的自立について、
経済的自立というのは不可能です。日本で舗装された道路で運搬される食料を食べ物資を利用している限りは経済的自立とはとても言えません。本当に経済的に自立するなら無人島にでも住まなければなりません。
というようなことをおっしゃっていました。(どの作品かは覚えていません。すいません)
極端な表現ではありますが、結局のところ現代社会で生きる限りは、資産収入だろうが労働収入だろうが人に養ってもらおうが、生活を維持するために必要な労力を何らかの形で払わなければならない、という意味だと理解しています。
前述の通り、資産運用(特にキャッシュフローを生み出す運用)には高度な知識と相当の努力が必要になりますが、資産を築いたところがゴールではありません。
金融資産は、
- 金融政策やそれによる好景気/不景気
- 資源の余剰/ひっ迫
- 人口動態
- 戦争や疫病などの事変
などによる影響を必ず受けます。維持するだけでもそれなりの努力が必要です。
現に、近年では一度FIREをしたものの労働しなければ資産を維持できなくなっている人も多くいる様です。
https://news.yahoo.co.jp/articles/e433af4cdaca10896264445592f6d1512b1fa283
あさはかな話ですが、わたくしが最初にイメージしていた悠々自適の不労所得生活というのは「一切働かずに年間500万~1,000万円くらい使う」でした。
そして、本当に安定した資産収入を希望するとなると、年利2~4%くらいが目安です。
つまりは、上記の悠々自適の不労所得を安定して得るためには、2億5千万円くらいの金融資産が必要です。
何か事業を当てるか、リスクの高い資産運用を行うか、いずれにしても普通の人生では縁のない金額になってしまいます。
確かに、借金で首が回らない人は経済的にかなり不自由だと思います。
しかし、資産収入で生活費をまかなう程の自由でなくても、生活費数年分くらいの資産があり、ある程度職場を選べるくらい手に職があれば、十分自立しているのではないでしょうか?
更に「おじいちゃんになってからお金持ちになっても・・・」とも思っています。
前述の積立NISA満額シュミレーションでは22歳から開始して46歳の時点で300万円サイドFIREに必要な額を少々超えるくらいです。
今を豊かに生きるためにある程度の出費は必要ですし、若い時期に我慢しておじいちゃんになってから大金を持ってもきっと後悔するだろうな、と思っています。
早期退職(RE)について
続いては早期退職(Retire Early)について考えてみます。
わたくしは、早期退職をしたいか?と言われたら答えはNOです。
仮に莫大な資産があっても、資産運用だけで生活費を稼ぎ続ける人生は選ばないと思います。
理由は簡単で、仕事をしていないとダメ人間になってしまいそうだからです。
小人閑居して不善を為す(しょうじんかんきょしてふぜんをなす)という言葉があります。
ダメ人間が暇を持て余すとロクなことをしない、という意味です。
はい、わたくし時間を持て余したらロクでもないことをしそうな人間ですw
人間、少々の煩わしい義務を抱えているくらいがちょうどいいのかな、と思っています。
ということで「倹約に注力し、FIRE出来るほどの資産を築く」より「倹約はそこそこで、いざとなれば嫌な人や仕事からいつでも離れられる額の資産をキープする」くらいがちょうどいいと思っています。
まとめ
FIREについて再考した結果をまとめると、
- FIRE出来るほど大きな資産を築き、維持するのは困難
- 資産運用自体がしんどい
- 今の豊かさの為にある程度のお金は使いたい
- 仕事は続けるつもり
です。
かつて、バブル期に「ヤンエグ」と呼ばれる人が沢山いたそうです。
ヤング・エグゼクティブ(若い経営者、重役)の略で、要するに好景気に便乗し会社の経費を大量に使ったり、不動産高騰に便乗して稼いだお金で羽振りよく遊んでいた人達です。
しかし、バブル崩壊とともにそういった方々は消えていき、ヤンエグという言葉も廃れてしまいました。
今も羽振りよく遊んでいるのは、ちゃんとした事業で収益を上げている人達だけだと思います。
これは100%個人の意見でちゃんとした根拠があるわけではないのですが、ここ20年の米国株もちょっとバブル気味だと思っています。
ちょっと前によく聞いた「億り人」という言葉と同様、FIREという流行り言葉も消えていき、ちゃんとした資産形成をできた真のFIRE達成者たちが残ると思っています。
この記事がお読みのあなたのより良い人生と資産形成のお役に立てれば幸いです。
それでは (*゚▽゚)ノ