与太話

バランスシート(B/S)の読み方を若手社長が解説_02

この記事では、バランスシート(B/S, 貸借対照表)の読み方をストーリー仕立てで解説します。

バランスシートの本質について解説し、簿記の学習や会計の実務でのベースとなる見識が身に付く記事にしました。

  • 簿記検定に合格したけどバランスシートの意味が分からない人
  • 企業の決算情報から業績を読み取りたい人
  • 法人設立を考えている人

これらの方向けの記事です。

是非ともご覧ください。

【本シリーズ】



この記事では、バランスシート(B/S)の概念を理解するために、P/L(損益計算書)と仕訳については一切触れません。
迷宮に迷い込みやすいバランスシート(B/S)の概念を重点的に説明してあります。
事業をする上で、バランスシートの理解はとても大切です。
しかし、フリーランスエンジニアの方であれば、税務は税理士の方にお任せし、自身のエンジニア力を磨くことをオススメします。

【フリーランス向け】税理士活用で手取り10%増やす方法

前回のおさらい

ここで簡単に前回の記事をおさらいします。

とても重要な簿記の本質ですので、再びお伝えします。知識を整理し、完全に理解してしまいましょう。

上図が表しているのは、

  • 左側は資産目録
  • 右側は資産の調達方法
  • 資産の調達方法には、返却が必要な部分と返却が不要な部分がある

です。

そして、企業が売上を上げたり、給与を支払ったり、物品の購入などの活動を行うと、資産目録と資産の調達方法が変化します。

バランスシートが示しているのは資産目録と資産の調達方法です。
企業の活動によって変化する資産目録と資産の調達方法がわかれば、企業活動と資産の変化の関係が理解でき、バランスシートも理解できます。

バランスシートの変化をストーリーで解説

前回登場した、屈強な配達員で脱サラ・独立した衛門田さん(仮名)のその後のストーリーからバランスシートの変化を解説します。

※執筆者のえもんだ社長とはなんの関連もない架空の人物です。

前回の衛門田さんの活動は、

  • 資本金300万と借入金300万で配送事業を立ち上げ
  • 現金100万円で配達用車両を購入し
  • 自身に給料(役員報酬)を20万支払い
  • 配送業で150万円の売上を出す

でした。

今回はその続きで、借入金返済からお話しします。

借入金返済

前回終了時点のバランスシートは以下の通りです。

ここで衛門田さんは気付きました。

「現金は十分にあるから、別に借入金は必要ないんじゃない?」と。

そこで、借入金を返済することにしました。

しかし、一気に現金が減るのもちょっと心配です。

ということで、100万円だけ返済することにしました。

その時点のバランスシートは以下の通りです。

  • 現金:630 → 530
  • 借入金:300 → 200

現金で返済したので現金100万円が減っています

そして、借入金(資金調達の方法のうち、返却が必要な金額)も100万円減っています。

さらに、借金の返済により資産総額が減っています(730万円→630万円)

借金を返済すると資産総額は減ります。逆に、借入をすると資産総額は増えます。

一般家庭で考えれば、借金はあまりいい話ではなく、原則はできる限り早く返済した方がいいと思います。

しかし、事業で見れば、利益を生み出す資産は多い方がいいです。事業の先行きや利息などを総合的に見て、必要に応じて借入金も活用するのは全く悪くありません。

債務超過

ここまで事業が好調な衛門田さんですが、ふとあるニュースを目にしました。

『時代を牽引する超新星ベンチャー企業〔フェイスゾン〕がIPO(株式公開)へ!!』

配達業に従事する衛門田さんでも名前を聞いたことがあるIT企業がIPOとは、なんだか凄そうです。

そして、よくわからないままスマホで申し込んだIPOに当選し、2000万円の新株を買えることになりました!

「俺の時代が来た!」そう思った衛門田さんは、早速金融機関の方に連絡しました。

フェイスゾン社のIPOでしたので、金融機関も現金2000万円を気前よく貸し出ししてくれました。

現金2000万円を借り入れした直後のバランスシートは以下の通りです。

  • 現金:530 → 2530
  • 借入金:200 → 2200

現金が2000万円増え、借入金(返却が必要な資金調達)も2000万円増えています。

また、ご覧の通り借り入れによって総資産が増えています(630→2630)。

なお、この時点ではとても大きな額の借金がありますが、債務超過ではありません

その後はもちろん、借り入れたお金でフェイスゾン社の株式を購入しました。

少々余談ですが、借入の際に使い道が指定されているケースはよくあります。ちゃんと借入時に同意した通りの使い方をしましょう。
個人でも借入の際の約束は守らなければなりません。住宅ローンの名目で借りたお金で投資用不動産を買ってしまい、酷い目にあった人がたくさんいます。
また、中小企業の借入金は社長個人が連帯保証人になる必要があるケースが大半です。

株式2000万円を購入した直後のバランスシートは以下の通りです。

  • 現金:2530 → 530
  • 株式:0 → 2000

ご覧の通り、現金が2000万円減り、株式が2000万円増えました

資産の総額に変化はありません。

また、負債の部も純資産の部も一切変化はありません。資産目録は変化しましたが、資産の調達方法は変化していないからです。

しかし、IPOから2週間後、ネット上にとんでもない記事が出ました。

フェイスゾン社 10億人分の個人情報流出
信用情報から使ってる歯磨き粉まで、全ての個人情報が流出した模様

どうやったら使ってる歯磨き粉までわかるんだ!?

などと驚いている場合ではありません。ニュースによると、フェイスゾン社のCEOはすでにレバノンに亡命したそうです。

当然ですが、株価は暴落し、買値の1000分の1になりました

衛門田さんの保有する株式の価値は2万円になりました。それにより、営業外費用が1998万円発生しました。

この株価暴落時のバランスシートは以下の通りです。

  • 株式:2000 → 2
  • 繰越利益剰余金: 130 → マイナス1868

この状態が債務超過です。

債務超過とは、資産の部(資産目録)よりも負債の部(返却が必要な資金調達)の方が大きい、という状態です。

上図をご覧いただくとわかりますが、純資産の部がマイナスになっています。繰越利益剰余金のマイナスが資本金よりも大きいために、純資産の部全体がマイナスになってしまっています。

債務超過とは、
負債の部(返却が必要な金額) > 資産の部(現有資産)
という状態である。
債務超過は、純資産の部がマイナスになることによって起こる

上図では、負債の部が大きくなりすぎて、純資産の部を覆い尽くしています。純資産の部がマイナスになる(債務超過)場合には、このように左側より右側を下に長く書きます。

なお、この時点でも企業は倒産しません赤字が出ても、債務超過となっても、企業の営業自体は可能だからです。

債務超過解消

フェイスゾンのCEOには恨みがありますが、レバノンに行って恨みを晴らす余裕もありません。

そもそも恨みを晴らしても債務超過状態は一切改善しません。

ということで本業で財務状況を立て直すことにしました。

営業外費用を1998万円も計上したので、衛門田さんは自身の給料をゼロにしました。生活費をなんとかできる貯金を持っていたためにできた決断です。

本来、役員報酬は年度始まりに1年分をまとめて申告し、申告した通りに支払いをする必要があります。
しかし、損失を出した際などは例外として役員報酬を下げることが可能です。
その際には、社会保険料や所得税なども下がるので、会社から出ていく現金を抑えることができます。
また、役員報酬はゼロ円にしても法律上は問題ありません。(従業員には、皆さんご存知の法定最低賃金があります)

衛門田さんは100メートルを11秒で走れて、ウエイトリフティングを150キロ持ち上げられる化け物です。

配達業でその超人的な能力を遺憾なく発揮し、株で損した後の半年で2000万円の売上を上げることができました。

この時点でのバランスシートは以下の通りです。

  • 現金:530 → 2530
  • 繰越利益剰余金: マイナス1868 → 132

とりあえず債務超過は解消しました。

現金は沢山ありますが、借入金も多い状態です。

まとめと参考図書

今回のストーリーはここまでです。

今回の記事の要点は、

  • バランスシートの左右で何を表しているかのおさらい
  • 借入金の増減とバランスシートの変化
  • 債務超過とはどういう状態か

です。

簿記の勉強では数字の埋め方は解っても、バランスシートが何かを示しているのかの理解は難しい場合が多いと思います。

マイクロ法人経営の実務では、バランスシートが何を示しているかさえわかれば、そのほかの部分は検索すれば大体わかりました

このシリーズでバランスシートの概念を理解してしまいましょう。

前回に引き続き参考図書はこちらです。

バランスシートのほか、P/Lなどの財務諸表についても記載してある良書です。この記事の内容が理解できたら、一読をお勧めします。

それでは (*゚▽゚)ノ

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